箱型の重ねの器は、正月などの年中行事や儀礼の際に使われた、日本の伝統的な器の形態のひとつです。本来は漆塗りの格調高いものが主流ですが、磁器で作られたこの重箱は、食器としても保存容器としても使える、日常使いの品になりました。
箱型の重箱を磁器で作ることは大変難しいことだと言われていました。磁器を焼成する際に4辺の側面が正確な正方形にはならず、粘土が収縮して内側にカーブしてしまうため、正方形の同じ箱を連続して作ることが難しいのです。また、目に見えないような変形でも箱を重ねることで大きなガタつきが出てしまいます。製作当初は課題が多かったのですが、原型師と生地屋、窯元の努力と工夫により正確な正方形の箱ができるようになり、重ねても僅かなガタつきしかでなくなりました。
元々重箱は木製の指物に漆で仕上げる日本の伝統的な器です。その器の良さを日常使いできる時期で作ることで使用範囲が大きく広がりました。これも日本の伝統形式を現代に受け継いだ新しい形の器の提案だと考えています。