胴の円やかなふくらみや口元の端反りが、掌にしっくりとなじみます。 人の手でひとつずつ仕上げられる上品な薄さと繊細な口あたりは、型吹硝子ならではの美しさです。
真っ赤に溶けたガラスを吹き棹の先に巻きつけて坩堝から取り出し、息を吹き込んで形を整えたら金型の中で膨らませて成形します。吹き上がった状態では上部に余分な部分が残っているため、しっかり冷ました後に、これを取り除き口元を仕上げる工程があります。切り口を研磨し、最後にその縁を火で炙って鋭角になった口縁をほんの僅かに溶かして滑らかに整えます。火を当てすぎると薄いガラスはすぐにへたってしまい火が弱いと口あたりがきつくなるため、繊細な加減が必要であり、使用感を大きく左右する大切な工程です。
機械生産のグラスの縁が一様に厚く丸みを帯びているのに対し、手作りのグラスの縁はこうして薄く繊細に仕上がるのです。飲みものの味わいが違って感じられるほど、人間の唇はわずかな差を敏感に感じ取ります。手作り品と機械生産品の使用感の差は、その口あたりに顕著に現れます。